(第1回)平成15年度「税制改正」のポイント 中小企業税制・個人所得税・消費税 編
+++ 注目される改正項目を総チェック! +++
(中小企業税制)
(1)改正前
中小企業技術強化税制・・・中小企業者等の試験研究費の10%(平成15年4月1日以降開始分は6%)
を税額控除。
ただし、当期法人税額の15%を限度とします。
(2)改正後
1.中小企業技術強化税制
中小企業者等の試験研究費の12%(3年間の時限措置として15%)を税額控除。ただし、当期法人税
額の20%を限度とします。
2.試験研究費の総額に係る税額控除制度(創設)
法人の試験研究費の8〜10%(3年間の時限措置として10〜12%)を税額控除。
ただし、当期法人税額の20%を限度とします。1と選択適用です。
なお、増加試験研究費の税額控除は、適用要件そのままに期限が平成18年3月31日までと延長され
ます。1、2と選択適用です。
Point 試験研究費とは、製品の製造または技術の改良、考案もしくは発明に係る試験研究のために
要する費用で、原材料費、人件費
(専門的知識をもってその業務に専ら従事する者に係る人件費)および経費などです。
(1)改正前
課税留保金額に対する法人税
年3000万円以下・・・10%
年1億円以下・・・・・・15%
年1億円超・・・・・・・・20%
ただし、資本金1億円以下の同族会社は、税額の5%軽減。
(2)改正後
自己資本比率{自己資本(同族関係者からの借入金を含む)÷総資産}50%以下の中小法人に対す
る留保金課税を停止。税額の5%軽減は廃止。
Point 同族会社の判定も改正され、持ち分割合の基準が50%以上から50%超(自己株式を除く)に
なります。

図表16-改定前- |
図表17-改定後- |
資本金 |
交際費等の額 |
取り扱い |
資本金 |
交際費等の額 |
取り扱い |
5千万円以下 |
400万円以下の部分 |
80%損金算入 |
1億円以下 |
400万円以下の部分 |
90%損金算入 |
400万円超の部分 |
損金不算入 |
400万円超の部分 |
損金不算入 |
5千万円超 |
全 額 |
損金不算入 |
1億円超 |
全 額 |
損金不算入 |
Point 平成15年4月1日から平成18年3月31日までに開始した事業年度に適用があります。
(1)改正前
所得価額10万円未満の小額減価償却資産は事業に供した年度に全額損金算入可。
(2)改定後
中小企業(資本金1億円以下)と青色申告事業者に限り、所得価額30万円未満の小額原価償却資産に
ついて、事業に供した年度に全額損金算入可(平成15年4月1日〜平成18年3月31日までの取得資産)。
Point 30万円未満の小額減価償却資産は、償却資産税の課税対象になります。
消費税
(1)改正前
免税点・・・・・・・・・・3000万円
簡易課税制度適用基準・・・2億円以下
価格表示・・・・・・・・・総額表示、外税表示の選択可
(2)改正後
免税点・・・・・・・・・・1000万円(平成16年4月1日以後開始課税期間から)
簡易課税制度適用基準・・・5000万円以下(同上)
価格表示・・・・・・・・・総額表示
(平成16年4月1日から)
Point 免税点・簡易課税制度の改正適用は、1年決算法人であれば平成17年3月期から、個人の場
合は、平成17年分の申告からです。
その他の税制改正としては、登録免許税の税率引き下げ、および3分の1の課税標準の特例廃止、IT
投資減税などが実施されます。また、資本金1億円超の法人は外形標準課税が適用されます。
(個人所得課税)
1:住宅ローン控除
住宅ローン控除とは、金融機関等から融資を受け、自宅を新築または購入した場合(工事費用が100万
円を超える増改築を含む)、その住宅に居住した年から一定期間、年末のローン残高に一定の率を乗じ
た金額を所得税額から控除する特例です。
(1)改定前
住宅ローン控除の適用を受ける居住者が、転勤などの理由でやむを得ず家族を残して単身赴任する場
合には、引き続き住宅ローン控除の適用が認められます。
しかし、家族で転居した場合には、それ以後の住宅ローン控除は一切受けられなくなります。
(2)改定後
家族で転居した場合でも、転勤その他これに準ずるやむを得ない理由でその自宅から転居し、その後、
その自宅に再入居した場合には、一定の要件のもとで住宅ローン控除の再適用が可能となります
(再入居した年にその自宅を賃貸していた場合には、その翌年からの適用)。この適用を受けるために
は、居住しなくなった日までに、その理由を記した届出書を税務署に提出し、再適用を受ける最初の年
分の確定申告書に再居住したことを証する書類を添付する必要があります。
平成15年4月1日以後に転居した場合の措置です。
Point 控除期間は、居住年から10年(平成14年、平成15年に居住の場合)です。この期間には、転勤
に伴う不適用期間も含みます。
また、海外転勤は、単身赴任の場合であっても本人が非居住者となるので、転勤期間中は、ロ
ーン控除の適用は受けられません。
2:配偶者特別控除の原則廃止
(1)改正前
配偶者特別控除は、納税者本人の合計所得金額が1000万円以下で、配偶者の所得が76万円未満で
あることを要件に適用される所得控除で、配偶者の所得に応じて段階的に控除額(3万〜38万)が決め
られています。
(1)改正後
平成16年分以後の所得税とその翌年以後の住民税から、配偶者特別控除のうち、配偶者控除に上乗
せして控除される部分が廃止になります。
Point 配偶者控除の適用がなく、配偶者特別控除の適用のみがある場合(配偶者の合計所得が38
万円超〜76万円未満)の配偶者特別控除は存続します。

寡婦適用可否判定表 |
区分 |
扶養親族 |
生計を一にする子以外 |
生計を一にする子 |
有 |
無 |
有 |
無 |
寡婦本人の
所得 |
所得要件
なし |
500万円
以下 |
500万円
超 |
500万円
以下 |
500万円
超 |
500万円
以下 |
500万円
超 |
夫と死別 |
○ |
○ |
× |
◎ |
○ |
○ |
× |
離婚後、婚姻無 |
○ |
× |
× |
◎ |
○ |
× |
× |
夫の生死が不明 |
○ |
○ |
× |
◎ |
○ |
○ |
× |

寡夫適用可否判定表 |
区分 |
扶養親族である生計を一にする子 |
有 |
無 |
500万円以下 |
500万円超 |
所得要件なし |
控除 |
○ |
× |
× |
寡婦・寡夫控除の対象は、
その年度の12月31日(年の中途で死亡したときはその死亡の日)時点で判定。
【平成16年度までは、老年者に該当していない人(年齢65歳未満)であること。】
平成17年度からは年齢65歳未満の文言がなくなりました。
生計を一にする子の対象は、
他の人の控除対象配偶者又は扶養親族になっておらず、
総所得金額等の合計額が基礎控除額(38万円)以下であること。
○ 寡婦・寡夫 控除額 270,000円(所法81)
◎ 特定の寡婦 控除額 350,000円(措法41の16)
× 適用なし
所得要件の500万円以下、500万円超は合計所得金額で判定します。
(第3回)生命保険の課税関係
生命保険の契約形態別課税関係 |
区分 |
契約形態 |
課税関係 |
保険料
払込人 |
被保険者 |
満期 受取人 |
死亡 受取人 |
満期又は解約 |
被保険者死亡 |
払込人死亡 |
A |
本人 |
本人 |
本人 |
配偶者 |
所得税・住民税 |
相続税(保険金) |
相続税(保険金) |
B |
本人 |
本人 |
配偶者 |
配偶者 |
贈与税 |
相続税(保険金) |
相続税(保険金) |
C |
本人 |
配偶者 |
本人 |
本人 |
所得税・住民税 |
所得税・住民税 |
相続税(権利) |
D |
本人 |
配偶者 |
配偶者 |
本人 |
贈与税 |
所得税・住民税 |
相続税(権利) |
E |
本人 |
配偶者 |
子 |
子 |
贈与税 |
贈与税 |
相続税(権利) |
F |
子 |
本人 |
子 |
子 |
所得税・住民税 |
所得税・住民税 |
相続税(権利) |
G |
本人 |
子 |
子 |
本人 |
贈与税 |
所得税・住民税 |
相続税(権利) |
H |
配偶者 |
本人 |
配偶者 |
配偶者 |
所得税・住民税 |
所得税・住民税 |
相続税(権利) |
◆所得税・住民税が課税される場合、一時金で受けるときは一時所得になり、年金で受けるとき
は雑所得になります。これらは他の所得と合算して申告することになります。
◆一時所得={(保険金−払込保険料)−特別控除(50万円が限度)}×1/2
◆雑所得=(その年に受ける年金+その年に分配を受ける剰余金)−{その年に受ける年金×
(掛金の総額−年金支払日前に分配された剰余金)÷年金の支払総額}(所令183条1項)
◆死亡保険金の受取人が法定相続人である場合は、その保険金のうち「500万円×法定相続人
の数」が非課税となります。
◆権利の評価
1. 平成15年4月1日以降の相続または遺贈については生命保険に関する権利の法定評価の
規定については原則として個々の契約にかかる解約返戻金の額を用いることになっています。
